2017年の日本映画における「海辺の生と死」の貴重性
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「海辺と生と死」という映画をご存知だろうか。 2017年に公開された1作で、島尾ミホ著の小説「海辺の生と死」を原作として製作された作品である。
この「海辺の生と死」、2017年の日本映画界において異彩を放っていた。
物語の舞台は、第二次世界大戦末期の加計呂麻島。 奄美大島の南西に位置する小さな島である。 加計呂麻島にも出撃要請を待つ日本兵が常駐を始め、島の様子も少しずつ変わり始めた頃、国民学校の教師である大平トエの前に、海軍特攻隊の隊長である朔が現れるところから物語は始まる。
戦争映画ではなく恋愛映画
「生」や「死」、という言葉からも印象があるように、タイトルだけ見るとこの映画は戦争映画だと考えられてしまうかも知れない。
しかし、この「海辺の生と死」は、純愛映画なのである。 現代の若者にフォーカスした恋愛映画が乱立する昨今、ここまでまっすぐで熱い恋愛映画は唯一無二といえる。
主要キャストと地元住民
この映画が異質である理由、もう一つは、主要キャストの5名を除いた全員が奄美大島に住む住民であることである。
物語に登場するトエの生徒や、冒頭、トエと朔の出会いの際に仲介となった先生など、エキストラという枠を越えて、地元住民の活躍が光っている。 しかし、当然のことながら、決して演技が上手いとは言えない。
ぎこちないセリフに違和感を感じるが、それもまた味。 物語に程よいエッセンスを加える役割を果たしている。
自然の音
もう一つの魅力、それは音である。 島ならではの、ゆっくりとした時間の流れと、それに反して徐々に迫ってくる戦争の脅威。
そんな中、劇中に一貫して変わらず存在するのが自然の音なのだ。 鳥や虫の鳴き声や波や風、樹々が揺れる音、劇中に使用されている自然の音は、撮影時に存在したもののみを使用している。
できることなら、ヘッドフォンをして、自然の音を注目しながら観てみることをオススメする。
「海辺の生と死」は現在、DVD・Blu-rayで発売中。この上ない純愛映画を多くの人に観て感じ取って欲しい。