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【書評・読書記録】青空の休暇 (辻仁成)

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辻仁成『青空の休暇』

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『青空の休暇』 あらすじ

真珠湾攻撃から始まった日本とハワイの歴史と人を結ぶ物語。

 

主人公は75歳になる無骨で昔気質な男、周作。

 

真珠湾攻撃から五十年の節目に、周作は戦友の早瀬・栗城とハワイへ向かうことになる。 終わらない青春を抱えて生きる周作。

 

そして、周作を生涯愛し抜いて自ら死を選んだ妻。長く生きながらも未だ味わうことのなかった人生の輝かしい一瞬を求めるため、今一度、大空を羽ばたく。

 

『青空の休暇』感想など

主人公と戦友たちは、真珠湾攻撃に参加した張本人。

 

戦争が終わった事実はあるものの、実際に戦地の最前線で戦った当事者たちは未だに当時の出来事や感情は拭いきれずにいます。

 

彼らが精神的終戦を迎えるために50年ぶりにハワイに向かう。そこで偶然にも出会ったのは、真珠湾攻撃に所縁のある日系人真珠湾攻撃によって負傷した元アメリカ軍人。

 

真珠湾攻撃が行われた直後、ハワイに多く生活する日系人スパイ疑惑がかけられました。

 

外見は日本人、しかしながら国籍や文化はアメリカ人である彼らは、アメリカへの忠誠を示すためにアメリカ軍として第二次世界大戦に参戦させられた事実があるようです。

 

そんなタイミングで出会った彼らが企てたとある出来事。

 

自らが精神的終戦をするために、戦争によって失った仲間たちの願いを叶えるために、戦争によって失った時間を取り戻し、遅れた青春の輝きを感じるために無骨に取り組む日本人と、日系人の思いがとても美しく感動できる物語でした。

 

対立する軍隊に所属していた人々は、それぞれの国に従った結果、戦地に赴くことになったものの、軋轢があるのは国単位での話であって決してそれに従って動いている個人の問題ではない。

 

だから、真珠湾攻撃を起こした人々は憎むべき存在ではない。

 

敵と味方という言葉で簡単に分類できない、戦争をミクロな視点で見たときにしか現れない戦争の新たな側面です。

 

実際にそれが事実であったかは分かりませんが、そうであって欲しいと心から思います。

 

もう1つ注目すべきは、ハワイでの出来事の間に挟まれている、周作の妻の日記。

結婚から数十年がたち、年を重ねても、薄れることなく周作のことを愛し続けているが故に、募る苦悩が綴られているのですが、これがかなり情熱的。

無骨で不器用。

 

感情を表現することも滅多にない周作の妻だからこそ、毎晩のように苦悩し思いを日記に発散するしかない様は、時代背景の一致もあり島尾敏雄さんが『死の棘』で描いた自身の妻、島尾ミホさんを彷彿とさせました。

 

歴史と友情、愛という様々な要素が混じり合った濃厚で美しい物語です!!