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【書評・読書記録】透明なきみの後悔を見抜けない (望月拓海)

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望月拓海『透明なきみの後悔を見抜けない』

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あらすじ

静岡で暮らす20歳の大学生、開登。 彼はユーレイが見えて、会話ができるという不思議な力をもっている。

 

後悔を抱えて死んでいったユーレイたちは、この世に残り続け、周りに自分の姿が見えないまま、一人悩んでいる。 そんな後悔を晴らすことで、彼らが成仏されるように奔走する開登。

 

そんな中、とあるユーレイとの出会いによって、開登が自身のこれまでの生き方と後悔を自覚した時に、本当の自分が見つかる。

開登が我を捨ててまで、ユーレイたちのために奔走する理由とは。そして、自分自身も知らない開登に隠された秘密とは。

衝撃と感動が詰まったミステリーです。

 

感想など

第1章を読み終えた時点で、よくあるワンシチュエーションの一話完結型で構成された短編集なのだなと思っていたのですが、これが全然違いました。

 

街中のユーレイたちの後悔を見抜いて、それを解決し成仏するという一連の流れは変わらないものの、話ごとに主観が変わり、違う目線で語られます。

 

そして、終盤に近づくにつれて、物語の一貫性とともに、作品に隠された秘密も徐々に明かされていくような、読み応えのある一冊になっていました。

 

何気ない物語だったはずなのに、全てが繋がり、秘密が明かされた時、感動は唐突にやってきます。

 

このようにストーリーの面白さもさることながら、大事なところで度々出てくる人間の弱いところや人知れず抱えている葛藤を救い出すような表現が出てくることが非常に特徴的です。

 

人のために生きるということは、同時に自分を犠牲にすることでもある。

しかし、人のために自分を犠牲にすることが、本人にとって本当に良くないことなのか。

 

教育を強いる親がいることに対する悩みをもつ少女に対して。

大人も完璧ではないし、弱くて欠けていることがある。

子である自分はそれを頭の片隅に置いて生きていくと何をするにも気が楽である。

そして、大人だって手探りなんだから自分自身も手探りで、自分のペースで生きていけばいい。 個人的に、このタイミングで読むことができてよかったです。