【書評・読書記録】ピアニシモ・ピアニシモ (辻仁成)
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辻仁成『ピアニシモ・ピアニシモ』
『ピアニシモ・ピアニシモ』 あらすじ
中学1年生のトオルは、教室では特にクラスメートと接することもなく、チャットルームでも発言をすることがない、いわゆる「いるだけの人」。彼には小さな時から彼にしか見ることができない親友ヒカルがいた。
ある日突然、トオルの中学校で起こった生徒の失踪事件。
未だ見えない犯人を追うべくトオルがたどり着いたのは、死の世界。生と死の間をさまよいながら、希望と想像力だけを武器に世界に存在する灰色と葛藤する物語。
『ピアニシモ・ピアニシモ』 感想など
これまで読んだ辻作品の中で一番の大作。
そして、これほどまでに作品の分類ができないことがあるのかと思うほど、多くの要素が入り混じった作品でした。
学園小説で主人公トオルの成長物語、同級生のシラトとの交流を描いた青春物語、そしてその先の関係を描いた恋愛物語。そんなリアルな要素と対照的に、ドッペルゲンガーや幽霊、世界を「ウラガワ」で支配している「灰色」の謎に迫る幻想的ミステリーであるともいえます。なんともここで伝えられるような短い表現にまとめられるような小説ではありません。
現実と非現実、男と女、思考の外と中、生の世界と死の世界、様々な軸が存在する非常に複雑な世界観で構成されるため、読みながら今なにが起こっているのか、そしてそれが現実なのか夢もしくは思考の中なのか彷徨うこともかなりありました。しかしながら、その覚束ずゆらゆらしている感覚が心地良い。
じっくり物語の世界観に没入したい方には是非ともオススメしたい作品です。