たいしょうの(主に)読書記録ブログ

1ヶ月に20冊。読書好き人間による読書記録。

【読書記録】ラジオラジオラジオ!(加藤千恵)

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加藤千恵『ラジオラジオラジオ!』

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あらすじ

時は2001年。地元の小さなラジオ局で番組をもつ女子高生。

憧れの東京に行く日を夢見る受験生でもある彼女は、自分の番組を少しでも広めるために、ホームページで発信を続けるなど奮闘する。

 

そんな中、一緒にパーソナリティを務め、ラジオに熱中していたはずの親友から突然、番組を休みたいと告げられる。それぞれの将来を考えながらもすれ違う二人の友情を描く物語。

 

感想など

いま目の前にあることへの熱狂と、近い将来に対する見えない期待が詰まった青春小説です。

 

自分の好きなこと、やるべき事だけに熱中するあまり、自分の将来や友人との関係性を冷静に見ることができなくなっている主人公。いつかの自分を見ているようで、あの頃の思い出や後悔が蘇ってきて、自己投影するとどこか愛しく思えます。

 

テレビとラジオの対比も絶妙。なんとなくラジオ番組をやっていて、普段からテレビは好きで見るけど、ラジオは聴かない。それぞれを優劣関係としてとらえていた主人公が人との出会いによってラジオの本当の役割とテレビにはない魅力に気付かされます。

 

これは2001年のお話。当然SNSなんてものはなく、BBS(掲示板)を使って地道に手探り状態でラジオの宣伝や自己発信をする様子は懐かしく感じました。不便ですね。

 

実はこの物語の、ラジオパーソナリティの女子高生という設定は著者であるカトチエさんの実体験なんだそう。その時の番組名も作品内の番組名と同じく『ラジオラジオラジオ!』

カトチエさんがファンと公言しているフリッパーズギターの楽曲『カメラ!カメラ!カメラ!』を彷彿とさせるタイトルです。(私も好きな曲です。書店でタイトルを見たときに、連想して、ついこの本を手に取りました。)

 

巻末に収録されていた短編『青と赤の物語』もとても良い!物語が禁止された世界で、物語に出逢った2人の学生、青と赤のお話です。