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【書評・読書記録】何様 (朝井リョウ)

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朝井リョウ『何様』

朝井リョウ『何様』

朝井リョウ『何様』

『何様』概要

思いや悩みをSNSに吐き出しながら就活に励む5人の人間模様と本性を描いた直木賞受賞作『何者』。その中で明かされていなかった人間関係や登場人物のその後が書かれた一冊。

 

『何様』感想

全6つの短編集。 『何者』との細かなつながりが所々にあるのが良い。

 

そして、たった一行ないし一文で、物語に厚みと温かみが生まれるような作りになっていました。

『何者』と『何様』一貫しているのは、責任や覚悟は、あとからついてくるということ。

個人的に好きなのは、例として挙げられていた車と教習所の話。 子供の頃は、車といえば、人も殺せる可能性もあり、特別な試験に合格した大人しか運転してはいけないという認識が強くある。しかし、いざ教習所に行ってみると、その日の内にいきなり車を運転させられる。 きっかけや覚悟は、何かが起こったり行動したりするその瞬間に生まれるものではない。

 

後から振り返ってみると、あれがきっかけだったんだなと、何事もそれくらいでいい。 これは思い切りすぎているような表現だなと思う反面、これまでの自分の経験を振り返ってみると、確かにその通りだなと。これが真理なのかもしれません。

 

そして全ては、巻末のオードリー若林さんによる解説に集約されています。

(これを目当てに本書を買いました。)これを読むだけでも、十分に価値があります。

 

成長(社会や会社、利潤追求の激しい回転の中で自我の尖った部分が削られること、順応すること)によって「そういうもんだ」で済ませてしまうことが多くなってしまう世の中。

それは諦めや省エネのためだけではなく、絶対に外的要因によって削られてはいけない自分の「本気の一秒・心の奥底にある理想の自分」を守るため。 どんなに外的要因の影響を受けたとしても、適度に刺激を受けて、適度に労働意欲が湧いて、それでいて心も体も壊れないという適度な位置に理想の自分を置いておくことがちょうどいいのです。

 

いつか「むしゃくしゃしてやった」なんて言ってみたい。 多分、一生、むしゃくしゃして何かをやることも、それを言うこともないのでしょう。 脳の中にその人の行動に作用するブレーキとアクセルがあるとするならば、圧倒的にブレーキが強い人なので。