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【書評・読書記録】何者 (朝井リョウ)

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朝井リョウ『何者』

朝井リョウ『何者』

朝井リョウ『何者』

あらすじ

人を分析するのが得意な拓人。

何も考えていないように見えて、着実に内定に近づいていく光太郎。

光太郎の元カノで、拓人が思いを寄せる実直な瑞月。

意識高い系だけどなかなか結果が出ない理香。

就活は決められたルールに乗るだけだと豪語する、隆良。

 

海外ボランティアの経験、サークル活動、手作り名刺などのさまざまなツールを駆使して就活に臨み、思いや悩みをSNSに吐き出しながら就活に励む5人。 SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする本音や自意識が、それぞれの抱く思いを複雑に交錯し、人間関係は徐々に変化していく物語。

 

『何者』感想など

今更ながら読みました。 本はもちろん、映画化もされて、中身を知っている方も多いかと思います。

 

「自分は何者なのか。」

 

5人の就活生、それぞれの本音と自意識が見え隠れする独特な空気感。

読みながら形容しがたい様々な感情を抱きました。 現実世界での建前上の振る舞いとSNSの中の本音。 そこから分かる人格について、

"ほんとうにたいせつなことは、ツイッターフェイスブックにもメールにも、どこにも書かない。ほんとうに訴えたいことは、発信して返信をもらって、それで満足するようなことではない。"

そう言われて考えてみると、SNSで本音として吐き出された言葉たちは本当に何も纏っていない本当の本音ではない。ということは、本当の本音はどこにも転がってはいないのですね。

 

物語の主軸となる就活。

年齢的にはものすごく近くで行われいるものの、就活らしい就活とは無縁な生活を送ってしまっている私。 Twitterのタイムラインにも、色んな人の就活模様が流れてきます。「また落ちた。あんなに頑張ったのに...。」というような就活が上手く進んでいないことを嘆くようなツイート。原因を分析せず闇雲に受けて、他責思考丸出し。落ちた自分をまるで悲劇のヒロインのように振る舞っているようで、正直、すごく苦手なのですが、

"ほんの少しの言葉の向こうにいる人間そのものを、想像してあげろよ、もっと。"

物語の中で主人公が先輩に言われたこの一言は、本当にその通りだなと感じました。字面だけでは足りない、その奥に隠れた意図まで感じ取るべきだなと反省です。 なにが正しいのか正しくないのかではなく、苦手か共感できるかを行ったり来たり。

 

この人、自分と近いかも。自分の分身のようだ。でも、ここは全く共感できない。むしろ嫌い。 自分がもしくはこの人は何者か、というよりは「人とは何か」を感じる作品でした。